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ドラマ『ゴールドサンセット』に込めた内野聖陽の思い:インタビュー

ドラマ『ゴールドサンセット』に込めた内野聖陽の思い:インタビュー

2025年2月16日にRエンタメディアで公開された記事の転載です。 【元記事】 https://news.tv.rakuten.co.jp/2025/02/int-uchinoseiyo.html ---------------- 主演・内野聖陽、監督&脚本・大森寿美男による『連続ドラマW ゴールドサンセット』(WOWOW)が2月23日(日・祝)からスタートする。 本作は、作家・白尾悠の同名小説を映像化したもので、後悔や追憶といった人生の機微を描く感動のヒューマンドラマ。内野が演じる謎の男・阿久津勇が出会う心に傷を負った女子中学生・上村琴音(毎田暖乃)をはじめ、人生崖っぷちの中年女性、職場でのトラウマを抱える女性、大切な人に優しい嘘をつき続ける青年など、“生きづらさ”や苦悩を抱えながら生きる人たちが、シニア劇団「トーラスシアター」との出会いを通じて、一つの物語に結び付けられていく。小林聡美、中嶋裕翔、三浦透子、坂井真紀、和久井映見、風吹ジュンなど実力派俳優が集結。 放送開始に先駆けて、内野に作品への思い、演じた役について、見どころなどを聞かせてもらった。 (文・田中隆信、撮影・中川容邦)

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  • 作成日時:
    2025/04/25 16:34

ゴールドサンセット

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ゴールドサンセット

――この作品は原作もありますが、脚本を読まれて、どんな印象を受けましたか? “演劇”を扱っている作品ということで、最初は見る方の食いつきが悪いんじゃないかという印象を受けました。一般的なイメージですが、“演劇は敷居が高いもの”と思われがちなので、そう思ったんです。ただ、内容は“演劇を使ったシニアの方たちの「生き直し」が表現されているので、そんなに特殊な世界観ではないなというのを演じてみて感じましたね。 ――シェイクスピアの「リア王」と聞くと、確かに敷居が高く感じられます。 そうなんですよね(笑)。「シェイクスピアの作品をちょっと読んだことがある」とか「『リア王』の内容はなんとなく知っている」という方は全然問題ないと思いますけど、「シェイクスピア?誰?」とか「チェーホフって誰?」って方にはちょっと難しいのかなという気持ちがありますけど、WOWOWさんの「ドラマW」はじっくりと見られる方が多いと聞きましたので、それなら楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。 ――“シニアの方たちの『生き直し』が表現されている”ということですが、いろんな人物が登場しますし、見る方もその中の誰かに感情移入して見ることができそうな気がします。 はい。今日、僕が代表してお話しさせていただいてますけど、いろんなシニアの方の素敵な瞬間が詰まった作品になっているので、ぜひ僕だけでなく、風吹ジュンさん(太田紀江役)、坂井真紀さん(太田千鹿子役)、和久井映見さん(三橋芳子役)、津嘉山正種さん(長島博史役)、益岡徹さん(吉松一雄役)などなど、皆さん本当に素敵なお芝居をされているので、それぞれのお芝居が見どころになっています。 ――内野さんが演じる“阿久津勇”は、古いアパートに住む謎の老人で、演劇をやっているという役ですが、演じる上で気をつけていたことは? 今回は本当にね、“閉じたキャラクター”なんですよ。自分を許していないんです。最初にもらった台本では、自分を殺めてしまうところから始まっていたんです。それは無くなったんですけど、それくらい「自分はもう生きていてはいけないんだ」「自分は生きている資格がない」というところから始まるので、自分の人生に対してシニカル(冷笑的)でペシミスティック(悲観的)な姿勢を持っていて、「外界とは縁を持ってはいけない」って自分で決めつけてしまっているような“閉じキャラ”なので、そこが結構ハードでしたね。語れる言葉は「リア王」のセリフだけという人物なので、手枷足枷が付いている感じでした(笑)。 ――自身でいろんな制約を決めてしまっている感じがありますし、確かに表現するのは難しそうな気がします。 はい(笑)。そういう人物が、55歳以上の方々が所属する劇団で「リア王」を演じることで「生き直していく」というか「再生していく」というとても気持ちのいい話で。いろんなキャラクターがいて、それぞれ違うと思いますが、阿久津に関してはそういう“再生”と“若い人たちに受け渡していく”みたいなテーマがあるキャラクターなので、毎田暖乃ちゃんが演じる“上村琴音”との関係を大事にしながら演じました。 ――阿久津と琴音は、多く会話しているわけではないけど、どこか心が通じ合っている感じが。 はい、自分(阿久津)も一度死にかけた。中学生の彼女(琴音)も死にかけた。「生きることを選択しないと決めた」というのでどこか繋がっていくみたいなところがあるので、非常に重い題材ですけど、最後には希望があるという。演劇を通じて若い女の子に生きるエネルギーが伝播していくみたいな。ざっくり言うとですけど、そういうところがありますね。 ――内野さんご自身は、お芝居によって救われたことはありますか? そうですね。養成所時代、悶々としていた時期に“演じること”で外界と結ばれたという体験があるので、この作品に内在しているテーマ性は、自分の実人生でもあったことです。僕自身も演じることで「生きてていいんだ」みたいなことを得た人なので、そこは重なりますね。 ――内野さんと阿久津は“お芝居をしている”という共通点があるので、演じやすい部分も多いと思いますが、それでもやはり別の人物を演じるわけですから、難しさもあったのかなと思いますが。 はい。僕は演じることを生業にしていますが、阿久津は若い頃に一度、落伍者というか、敗北しているんです。「僕は演劇に向いていない」と言って。それで“リア”を演じることによって、犯してしまった罪を償うというか。許しを得たいという気持ちで演じる。しかも一夜限り。ずっと素人だった人が、一度だけ、しかも迫真の演技をしなければいけないのは難しかったです。 ――同じ“演じる”でも、そういう違いは結構大きなものですよね。 そうなんですよ。興行で毎晩毎晩〇〇劇場で演じる「リア王」と違いますから。「リア王」を演じることでしか生きられない。演じることで罪を犯した人に対して許しを乞いたいという、ざっくりというとそういう話なので非常に“迫真性”とか“憑依性”が大事になります。 ――劇中劇を演じるということは、そういう違いも考えて演じる必要性がある、と。 はい。良かったのは、大森寿美男監督が事前に稽古をさせてくれたことです。「トーラスシアター」というシニア劇団のリアリティを出すために、この劇団で演じる「リア王」の台本まで作ってくれて、それをみんなで本読みをして、劇団員全員の意思統一をしました。演劇界の大先輩方をキャスティングしてくださったので、その人たちの知恵を借りながら、僕は参加できなかったんですが、ワークショップをしたりして、よりリアルな演劇の現場を表現されたそうです。 ――内野さんから見て、監督がこだわられた部分というのは? いろいろおありでしょうけど、印象的だったのは、大森さんという監督は演劇というものを信じているということでした。僕なんかは、演劇人と言えないような人間なので、年に1回か2回ぐらいのペースで舞台に立たせてもらってはいますけど、演劇界を背負えるほどの俳優ではありません。ただ、大森さんは“演劇”というものへの絶大な信頼と憧れと夢と希望と、というか、演劇の未来への想い、演劇への愛をすごく感じられる瞬間がありました。これは舞台をやってる人間としてはすごく嬉しいことでしたね。大森さんは“舞台”が原点の方なので、そういう思いがこの作品にも表れているんだと思います。 ――それは脚本からも感じましたか? 感じましたね。「嘘がいつの間にか真実になってしまう」とか「絶望の中からしか本当の演技は生まれない」といったものがセリフにあって、舞台的、演劇的だなって思いました。 ――大森さんが書かれる脚本の魅力はどういうところに感じますか。 僕はまだ大森さんと組んで数回なんですけど…、数回じゃないか!一番大きなのは大河ドラマ(『風林火山」』)で、あれは全51話ですからね。45分×51話ってどんだけ?(笑) あれは歴史物で毛色が違うんでしょうけど、僕の中で大森さんは「ロマンチスト」で理想家のような気がしています。その中でも非常に社会問題など硬派なことをねちっこく書かれてたりするんです(笑)。なので、娯楽作品としてパラパラっと見たい人に対しては、もしかしたら大森寿美男という作家は「難しすぎる」と言われてしまうかもしれないです。でも、逆に言えば、じっくりとドラマを見る人には嬉しいし、深いんですよね。 ――それが最初に話されていた「『ドラマW』はじっくりと見られる方が多いと聞きましたので、それなら楽しんでもらえるんじゃないか」ということにつながってくるわけですね。 はい。見る方だけでなく、演じる側も嬉しくなるんです。書かれてるセリフの裏側を耕し甲斐があるというか、非常に深い言葉があるので、「いかに掘り下げてやろうか」という闘志が湧くんですよね。生意気なことを言ってしまいましたが、そういう作家さんなんです(笑)。 ――闘志が湧くくらい演じがいがある、と。 阿久津がリアを演じるのも、その日限りの一世一代の芝居も、赦しを乞いたい女性が“コーディリア”に見えてしまい、それがものすごく影響していく、というのがト書きに書かれていたりすると、「いや、これ、ハードル高っ!」みたいな気持ちになります。一瞬たりとも嘘があってはいけない。「阿久津さん、昨日から芝居が変わったんです」「阿久津さん、誰かが取り憑いたみたいなんです」っていうセリフがあると、「そういう芝居をしないといけないんだ…」みたいな感じでプレッシャーを感じながら芝居をしました(笑)。そのへん、どういうふうに見えているのか、見ていただく皆さんの感想で分かるかなと思っています。 ――これまでにもWOWOWの「連続ドラマW」に出演されていますが、「ドラマW」のどういうところに良さを感じていますか? 表現において制約があまりなくて、CMで遮断されることなく1話を没入して見られるというのも大きな特徴かなと思います。演技をしたり、作品を作るときに“自由度”が高い方がいいじゃないですか。集中して見られますし、安心してというのも変だけど、「この作品はじっくり見てもらいたいな」という作品、今回の「ゴールドサンセット」もそうですし、これまで出演させてもらった「シリウスの道」が広告代理店の裏側を描いていたり、「パンドラⅢ 革命前夜」は内閣官房長官の役だったんですが海上自衛隊の潜水艦遭難事故を扱っていたり、「鉄の骨」は大手ゼネコンが舞台だったり、どれもテーマが重かったりするのでじっくり見てもらいたいドラマですからね。硬派な題材を扱っていて、果敢に挑戦する姿が描かれているので見応えあると思います。映画館と同じような感覚で、腰を据えて見てもらえるのも嬉しいです。

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